皮から革にする作業、「鞣し」とはどんな作業?

「革を鞣す(なめす)」という言葉は聞く機会こそあるものの、それが実際にどのような作業を意味するのかはわからないものですよね。イメージからすると、こすったり、伸ばしたりしているのかな? と思いますよね。でも実際はすごく複雑で、いくつもの専門技術を要する作業なんです。そこで今回は「皮」から「革」に変身させる「鞣し」の作業についてわかりやすく解説します。鞣しのことを知れば、きっとあなたも身の回りにある革製品に、もっと愛着が生まれますよ!

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鞣し剤がポイント

「鞣し(なめし)」とは簡単に言えば、動物の皮を製品として使えるよう加工する作業のことです。革の原料である動物の皮は、そのままでは腐敗や劣化してしまいます。そこで、皮に含まれているコラーゲン繊維に鞣し剤を結合させるのです。この工程が「鞣し」と呼ばれる作業です。ここで気になるのが「鞣し剤」だと思います。現在、主に使われているものに「クロム」と「タンニン」があり、その違いによって作業方法も「クロム鞣し」「タンニン鞣し」と呼ばれます。それぞれの鞣しについて見てみましょう。

クロム鞣し

クロムとは「塩基性硫酸クロム」と呼ばれる化学薬品のことです。約100年前に生まれたと言われるクロム鞣しの技術は、現在最もポピュラーな方法で、世の中に出回っている革製品の大半がクロム鞣しのものだそうです。なぜポピュラーな手法なのかというと、「タンニン鞣しよりもコストが安い」ことがあります。クロム鞣しを施した革のことを「クロムレザー」と呼びます。薄くても強度がある、耐熱温度が高い、発色性がよい、コストパフォーマンスに優れています。しかし、化学薬品が使われているので廃棄時に燃やすと有害物質が出るといった特徴も。

簡単にクロム鞣しの工程を説明すると、次の通りになります。
(1) クロム鞣し剤は酸性でなければ溶けないので、皮を酸性溶液に浸す。
(2)酸性になった皮にクロム鞣し剤を浸透させる。
(3)革に含まれた余分な水分を絞り出す。
以上がクロム鞣しの作業です。

タンニン鞣し

タンニンは植物由来の水溶性加工物の総称です。タンニンで鞣したので「タンニンレザー」と呼ばれます。実は、みなさんの身近なところにもタンニンは存在します。それはお茶です。お茶を飲むと渋みを感じますよね。あれはタンニンが含まれている証拠です。紀元前から続く製法ですが長い行程日数がかかるので、現在タンニン鞣しの革製品は全体の1〜2割と言われています。特徴を見てみると、革本来の風合いを出すことができる、自然に優しい、裂けやすい、光や熱に弱い、メンテナンスが必要、などがあります。革を長く使用する面ではクロム鞣しに劣りますが、肌にも自然にも優しい点、さらにクロム鞣しと違い経年変化が出やすく、経年変化を好む革好きな人に需要があるので現在もこの技術は受け継がれています。

タンニン鞣しの主流であるドラム製法の工程は次の通りです。
(1) 遠心力を使って皮にタンニンを浸透させるため、タンニンを溶かした水が入った大型ドラムに皮を入れて回転させる。
(2)革に含まれた余分な水分を絞り出す。

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まとめ

今回はクロム鞣しとタンニン鞣しの二つを紹介しましたが、レアな鞣しの方法として「燻す」「塩を使う」などもあるそうです。また、クロム鞣しとタンニン鞣しにしても、鞣し剤の調合具合によって鞣しの結果は異なるので、皮製品に携わるタンナー(鞣し革業者)たちの個性が色濃く出るようです。今後は鞣し方法にも注目して革製品をチェックしてみてくださいね!

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