「制限がある中でいかに自分の色を出せるか。それが楽しい」RENDO(レンド)

雷門で有名な浅草駅から、江戸通りを南千住方面に歩くこと約6分。その僅かな道程の間に、皮革製品の店を何店も見かけました。そう、浅草は、知る人ぞ知る皮革製品の街でもあるのです。その一角に「RENDO」はあります。黒を基調としたモダン&シックな装い。遠目にはカフェやバーと見まがう観光客もいるかもしれません。

「(出店先に浅草を選んだのは)選んだというより、必然でした」
RENDOオーナーの吉見鉄平氏は語ります。大学時代に靴づくりに魅せられた吉見さんが、大学卒業後に意を決して飛び込んだ職業訓練校も、初めて勤めた大手靴メーカーも浅草でした。その後、パターンナーとして独立してからも、この浅草の地で浅草の人と共に歩んできました。店舗を出店するに当たり、浅草以外の地は微塵も浮かばなかったと言います。


とにかく靴が好きだった

「制限がある中でいかに自分の色を出せるか。それが楽しい」RENDO(レンド)

学生時代はサッカーをしていたという吉見さん。幼い頃から革製の靴と共に毎日を過ごしてきました。雨の日でも、練習や試合を行うサッカーでは日々の手入れが欠かせません。ご存じのように皮革は水に非常に弱く、手入れが悪いとすぐに固くなってしまうからです。吉見さんは、自分の靴を毎日丹念に手入れし、大事に磨いて育ったに違いありません。そしてその環境が、自ずと吉見さんの靴へ目や心を向ける習慣を培い、また、皮革製品の扱い方を教示していったのです。

大学在学中にイギリスへ語学留学した際も、語学学校と並行して靴作りの学校へも通いました。とはいえ、留学中に空いた時間を、「せっかくなら好きな靴の勉強に費やしたい」くらいの気持ちだったとのこと。門を叩いた『コード・ウェイナーズ・カレッジ』が、世界的に有名な靴作りの学校だったのは全くの偶然で入ってから知ったと言いますから、吉見さんの運の強さや靴との縁の強さを感じずにはいられません。その学校で靴づくりを学んだことがきっかけで、その後靴づくりの道に進むことに。吉見さんがこうして靴作りの道で大成されることは、その時から既に約束されていたのかもしれません。


自分が培ってきたもの全てを反芻するような作業

「制限がある中でいかに自分の色を出せるか。それが楽しい」RENDO(レンド)

吉見さんの職種はパターンナーです。靴づくりにおいて、パターンナーの役目は、靴のデザインに対してその意味を理解して設計する「型紙起こし」。吉見さんは、ブランド立ち上げ以前はフリーランスでパターンナーをしていたそうですが、RENDOを立ち上げた現在でも、OEMの企画やパターン作りなどを外部から請け負っているそうです。そんな中、OEMを請け負っていると「デザイナーさん」と呼ばれることがあるそうです。しかし吉見さんは自身の仕事について、「そうではない」と首を振ります。

「私のやっていることは、デザイナーさんのようにゼロから何かをつくり出すのではなくて、これまで自分が経験してきたことを紡ぎ合わせるような感じです。これまで見てきたものを全て自分の中に落とし込み、反芻して、形を変えてつくり出す」

音楽でいえば、作曲ではなくアレンジやリミックスといったところだ、とのこと。そこに吉見さんの喜びや拘りがあると言います。

「ずっと受託の仕事をしてきたので、我を出すというよりは制限があるなかでいかに自分の色を出していくか、それが自分のスタイルなのかなと思います」
RENDOのアイテムは、スタンダードという旋律を守りながらも吉見さんのオリジナルがそこかしこに表現されています。


多角的に靴づくりに関わることで見えてくること

「制限がある中でいかに自分の色を出せるか。それが楽しい」RENDO(レンド)

前述のようにパターンナーの役目は「型紙起こし」ですが、吉見さんはRENDOの靴づくりの工程において、「デザイン→靴型づくり→型紙起こし」を担当しています。一般的にパターンナーが、靴型づくりを担当することは珍しいそうです。しかし、パターンナーの領域を越えて、型作りを基礎から学んだことで、自分が担当してきたパターン作りの部分に気付きを生み、相乗効果として靴作り全体の技術や思いが高まったと言います。

「それまでは言葉が通じない中で話していたような感覚だったのが、自分が型作りを覚えたことで、一緒に靴づくりをしている業者さんとも一歩二歩入り込んだところまで話し合うことができるようになりました」
 
サッカーでいえば、他のポジションを経験したことで自分のポジションや全体のフォメーションがより深く理解できたという感じでしょうか。まさに「RENDO」、ブランド名の由来にもなっている通り、全てが「連動」しているのです。


「制限がある中でいかに自分の色を出せるか。それが楽しい」RENDO(レンド)

お話を伺った人
吉見鉄平
1977年徳島県生まれ。大学在学中に、イギリスの「LondonCordwainersCollege」にて靴作りの基礎を学ぶ。卒業後、「東京都立城東職業能力開発センター台東分校」にて技術を磨き、2002年「セントラル靴(株)」に入社、パタンナーとして勤務。2007年に退社後、渡欧し現地の靴工房や工場を視察、またシューズブランドのパターン業務に携わる。2008年「443patternmaking」を設立し、フリーランスとして国内外ブランドのパターン、企画業務を手がける。2013年社名を「株式会社スタジオヨシミ」とし、自らのブランド「RENDO」をスタート。

JAPAN LEATHER BRAND“Mens Leather Magazine”がオススメする本物志向のレザーブランド

Official SNS

Copyright© Mens Leather Magazine. All Rights Reserved.

当サイトに掲載されている記事・写真の無断転載を禁じます。