傷みやすいコバは「コバ塗り」で耐久性アップ
同じバッグをずっと使っていると、取っ手(ハンドル)が痛んでくるということはないでしょうか。場合によっては塗装がはげてくるようなこともあります。経年変化とはいえ、ヌメ革が飴色になるのとは違って、みすぼらしいものです。そんなときに頼りになるのが革修理のプロですが、プロに頼むとどんな方法で修理してくれて、どんな仕上がりになるのか。普段はなかなか知ることのできない作業の内容をご紹介したいと思います。
お話を伺ったのは東京・田端で革修理店「革地屋」を営む深澤昌弘さん。深澤さんは大手チェーン店と個人店、2つの異なる業態で革修理について学んだプロです。
カバンの取っ手のように、革を裁断してある部分のことを「コバ」といいます。漢字では「木端」と書き、その由来は裁断面(切り目)が木の切れ端にみえるためです。
コバは革製品のなかでも耐久性の低い部分なのですが、染料を塗る→磨く、塗る→磨くを繰り返す「コバ塗り」をおこなうことで、強度を増すことができると同時に、上品に仕上げることができます。ここではコバ塗りを施してある取っ手の修理についてみていきます。
染料を塗り重ねることでキレイなコバが
コバ塗りによって盛り固められた染料や、ブランドが独自で用いる樹脂が、すでにところどころはげてしまっている場合は、思い切って全部はがすのが得策です。デコボコしているところにも色を塗ることはできますし、そうしたほうが金額的には安く収まりますが、すぐにまた色がはがれやすく、結局は時間とお金の無駄使いになりかねません。
コバに塗られた染料をはがすには、ヘラを使います。丁寧に削っていき、全部取り除くことができたら、改めて染料を塗っていきます。そして染料が乾いたら磨き、また染料を塗って乾かしては磨く、というように「塗る→乾かす→磨く」を幾度となく繰り返し、染料を含んだ樹脂を盛っていきます。そうした繰り返しの作業をおこなうため、仕上がりに必要な期間はおよそ3週間。職人技による地道な工程を経ることで、確かな強度が生まれるとともに、見た目も美しく仕上がります。
こちらがコバを修理したバッグです。いかがでしょうか。かなりきれいに仕上がっていますよね。みなさんもコバが傷んできたなと感じたら、プロに任せみはいかがでしょう。買ったときのような、美しさが戻ってきます。
お話を伺った人
深澤昌弘さん
高校時代よりファッションが好きで、なかでも靴に興味を持つ。大学卒業後はアパレルブランドに就職するものの、靴への想いが日増しに強くなり、革修理の大手チェーン店に転職、技術を磨く。その後、個人店でも研鑽を積み、2016年、東京・田端に「革地屋」をオープン。革製品を愛するからこそ情報収集などに余念がなく、幅広い提案ができるのが強み。
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