長年バッグを使っていると、色落ちやキズが目立つようになってきますよね。そうした場合は専門店に持っていくのが一番かもしれませんが、ここでは応急処置として、家庭でできる補修方法についてご紹介したいと思います。お話を伺ったのは、大手チェーン店や個人店で革修理の技を磨いたプロ、「革地屋」代表の深澤昌弘さんです。
クリームを塗る前に汚れをしっかり落とそう
色落ちやキズを少しでも目立たなくするためには、クリームを塗ると効果的なのですが、その前におこなっておきたいのが患部の汚れ落としです。革の繊維にはホコリなどの汚れが入り込んでおり、そのままクリームを塗ると汚れを閉じ込めてしまうことに。それでは逆効果ですので、まずはしっかりと汚れを取り除くようにしましょう。
汚れ落としに必要なのがクリーナーです。クリーナーには靴用とバッグ用がありますので、バッグ用を用意します。また、海外製のクリーナーは汚れを落とす力が強いぶん、色も一緒に落ちてしまったり、革がカサカサになったりする場合がありますので、汚れを落とす力がそこまで強くない、日本製のクリーナーの使用をお薦めします。適量を布に取ったら、患部に塗って汚れを取り除いていきます。
デリケートクリームで栄養を補給
ある程度汚れが落ちたら、いよいよクリームを塗っていきます。まずはじめに塗るのが「デリケートクリーム」と呼ばれるもの。デリケートクリームは栄養剤と保湿剤が入っているだけの、効き目が穏やかなクリームで、乳化性のためトロッとしているのが特長です。多くのメーカーがデリケートクリームを製造していますので、お好みのものを用意してください。適量を布に取ったら、塗り込んでいきましょう。
ツヤ出し効果のあるクリームで色落ちを補修
デリケートクリームの成分はほとんどが栄養剤なので、ツヤは出ません。そこで次に塗るのが、ツヤ出し効果のあるクリームです。これを塗ると、キズや色落ちも多少目立たなくなります。ツヤ出し効果のあるクリームはメーカーによって名前が異なっていて、たとえば日本製のコロンブスだと「ハンドバッグ用クリーム」、イタリア発祥のM.モゥブレィだと「アニリンカーフクリーム」、フランスのサフィールだと「レノベイタークリーム」となっています。これらのクリームにはツヤ出し効果のあるロウと脂が入っていて、その強さはメーカーによって異なります。
【コロンブス】→【M.モゥブレィ】→【サフィール】の順でツヤ出し効果が強くなります。
今回はM.モゥブレィの「アニリンカーフクリーム」をチョイスしました。適量を塗布すると、パサパサ感がなくなってツヤが出てくると同時に多少キズが隠れます。ただ、ツヤ出しクリームには補色力がないため、あくまでも応急処置。色落ちやキズをしっかり目立たなくするには、プロにお願いすることをお薦めします。
靴クリームはバッグに塗らないこと!
それから、補色できるクリームとして靴クリームがありますが、靴クリームにはロウや脂が多く入っているため、バッグに塗ると洋服に色が移ってしまいます。ですからバッグには絶対に使わないようにしてください。今回は家庭でできるバッグの色落ち補修についてお伝えしました。気になる箇所に、早速試してみてはいかがでしょう。
お話を伺った人
深澤昌弘さん
高校時代よりファッションが好きで、なかでも靴に興味を持つ。大学卒業後はアパレルブランドに就職するものの、靴への想いが日増しに強くなり、革修理の大手チェーン店に転職、技術を磨く。その後、個人店でも研鑽を積み、2016年、東京・田端に「革地屋」をオープン。革製品を愛するからこそ情報収集などに余念がなく、幅広い提案ができるのが強み。
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