"軌跡"を足元に、長く愛着を持って履ける一足

掘れば掘るほど出てくるWHEEL ROBEの革靴のこだわり、それでもまず最初に言いたいのは"木型"です。
WHEEL ROBEの木型は現在2種。1940年代のサービスシューズを基にした「#314 Last」と、整形外科の矯正靴を基にした「#1228 Last」があります。


WHEEL ROBEの靴は"日本でつくるアメリカ靴"のイメージなんです

「WHEEL ROBEの靴は"日本でつくるアメリカ靴"というイメージなんです。ただ、そのまんま踏襲してしまうと、単純にアメリカ靴をつくることになるし、木型が違うためどうしても日本人の足には合わないですよね。だから、木型の部分は日本人に合うような形に設計しようと考えて、職人さんたちとご相談させていただきました」
何度も何度も改良の積み重ねだったとのこと。
「木型を削ってもらって、その都度靴をつくってもらって......の繰り返しですよね。正直、僕ら自身木型だけを見てもどういう靴になるかはイメージがわきづらくて......。実際できたときには、この木型からまさかこんな靴ができるとはといった感じでしたね」
履いていて心地いい、抜群に歩きやすい革靴を求める中で、工藤さん達はデザインにも工夫を重ねていきます。
「日本人は、甲高だん広の方が多いと言われています。でも、あんまり人の足に合わせようとしすぎて、たとえばウィズ(足の幅)を広くもたせてしまうとフォルムがあんまり格好良くないんです」
「その微妙なラインを保つために、ウィズの広さを抑えめにして、その分ノーズ(つま先)の部分を長くすることによって、ちょっとドレスっぽくも見える形にしています」


"長く履ける靴"がつくれるなって

現在WHEEL ROBEの革靴の革はクロムエクセルレザーが中心です。ご存じの方も多いと思いますが、クロムエクセルレザーとは、ホーウィン社というアメリカ・シカゴにあるタンナーで製造されているレザーです。2.5mm以上を基準に厳選した原皮に、オリジナルブレンド(社外秘)のオイルを、長い時間をかけてたっぷり染みこませて仕上げられています。

さて驚くべきは、その厚み。ビジネス靴の革の一般的な厚さは1ミリ前後です。それに対して、WHEEL ROBEの革靴は2.2ミリという倍の厚さを持っています。
「1ミリ前後の厚みだと、履いていくうちにこすったりすると、銀(表面)がはがれちゃったり裂けたりという問題が出てきがちなんです。だから、こういうカジュアルの靴には向かないんです」
「そういった意味でクロムエクセルレザーはほどよい厚みもあって、堅牢さがあるかなと。また、クロムエクセルレザーは、オイルたっぷりなので、厚みの割には柔らかく足なじみも非常にいいんです。細かい傷くらいなら単純に磨くだけで目立たなくなりますし、経年変化も楽しみやすいですね」
「そういった理由もあって、この革だったら"長く履ける靴"がつくれるなと、期待をこめて選びました」
また、靴づくりの製法に、コルクを中底に入れることで履きなじみがよくなるグッドイヤーウェルト製法を採用しています。この製法は、ソールの交換がしやすいので、長く愛用するためのWHEEL ROBEの革靴にはぴったりですね。
さらに「レザーソールって格好いいと思うんですけど、滑りやすいので日本の天候やアスファルトには向かないんです。」と工藤さん。そう、そのこだわりは、実はまだ隠れてます。

「だから、ハーフラバーソールをつけることにしたんです。でも、ただラバーを貼り付けるだけだと、つま先から剥がれてきてすぐ修理しなきゃいけなくなるので、アウトソールを斜めに削ってゴムを差して、その上からハーフラバーソールを貼る仕様にしています。こうすることで剥がれづらくなりますし、またこのラバーだけを交換することができるメリットも出てくるんですよ」
「靴を履いていくなかで、すり減ってくる部分って限られているので、そこだけを変えたら、手間もお金も少なくて済むじゃないですか」 そしたらまたその分、長く履ける靴になるでしょう? と、工藤さんの目が言っているようでした。


いろんな人に履いてもらいたいから

WHEEL ROBEの革靴はその高いクオリティに対して、リーズナブルな価格設定も話題になっています。しかし、素材にもこだわっていて、手間もかけていて、それでこの価格を実現できている理由は何なのか、疑問に思った人も多いはず。

ブルゾンタイプ(襟付き)のレザージャケット

「工場の方には、革に極力無駄が出ないようにお願いしていて、デザインの部分でも革の取り都合を考えながら決めています。あと、最後の仕上げなど自分たちでできることは自分たちでするようにしています。今は、工場から納品された後、僕たちが一足一足磨いて、全部検品して、それから裏の刻印に朱を入れているんですよ。その上で、利益率も抑えることで......値段を落とすことができています」
工藤さんの口からさらりと出たあまりにも地道な言葉に、ただただ驚きます。しかし、工藤さんは「うーん」と呻ります。
「たとえばスニーカーって安く買えちゃうわけじゃないですか。じゃあ"革靴が4万円で売られてるけど買う?"と言われたら、どうなのかなって思うんです。もっと安い革靴もありますし」
「いろんな人に履いてもらいたいから、ちょっと利益率も落として、でも素材のレベルは落としたくないし、つくりもこだわりたい。どうしたら実現できるかって、工場の方とたくさん相談しました」
決してぶれない、どっしりとした根っこを感じさせる工藤さん。最後にこう結びます。
「僕らは"長く履ける靴"をつくりたいんです。悪いことではないんですけど、修理ができなくて履き潰すしかない靴って、僕個人はすごく抵抗があるんです。靴って100年前の靴が売られているぐらい、本来は長く履けるようなものですから」
「靴って修理を重ねて、ツラも変わって、クリームを足せばまたツヤが戻って、それの繰り返しで、ずっと長く履けるんですよね」


お話を伺った人

お話を伺った人
工藤類さん
1987年生まれ。東京の下町、向島・浅草で生まれ育ち、父親の影響で幼少の頃から洋服や靴に興味をもつ。2010年より(有)トライ・アップに入社。2011年より(有)トライ・アップにてWHEEL ROBEをスタートさせる。

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