「革靴をもっと好きになってもらいたい」WHEEL ROBE(ウィール ローブ)

その扉を開いた途端、一気に革の独特な匂いに包まれ、飴色をした木製テーブルの上に並んだWHEEL ROBEの美しい革靴が目に入ります。
東京の東、浅草にあるWHEEL ROBEのショールームは、あちこちが革の存在でうめられていました。あるものはタペストリーのように家具の上に垂れ下がり、あるものは秘密の地図のように丸めて紐で括られ無造作に転がっています。 無骨なのに、どこかファンタジックな、いつか思い描いた秘密基地のような空間です。


アメリカで自分たちのブランドとして、靴をつくりたい

「革靴をもっと好きになってもらいたい」WHEEL ROBE(ウィール ローブ)

2011年に立ち上がったブランド"WHEEL ROBE"。2015年にリブランディングして以降、そのクオリティの高さとコストパフォーマンスの良さで、現在革靴好きたちの心をじりじりと焦がしている存在です。
そもそものブランドの始まりについて、営業担当の工藤さんはこう語ります。
「もともと僕らの会社は、アメリカブランド靴の輸入卸業をしていたんです。その中で次第に、"アメリカで自分たちのブランドとして、靴をつくりたい"という思いが生まれました」
工藤さんは「手探りの状態から始めました」と笑います。スタート時点では "アメリカ製の靴を日本に入れるため"のブランドだったWHEEL ROBEが、なぜ自分たちの靴を作ろうと思ったのか。
アメリカ靴で使用している木型はそのままでは日本人が履きやすい木型ではありませんでした。そこで工藤さん達は、アメリカの工場で日本人の足に合うアメリカ靴をつくり、それを日本で販売する――そんなビジョンを抱きました。その思いを元に、卸業の人脈を伝って、アメリカの工場に製造を掛け合ったそうです。しかし、ここで壁にぶつかったといいます。
「生産性を優先させるアメリカでは、同じ木型・同じパターンで数をたくさんつくって、それを販売するというような、合理的な考え方が根底にあるんです」
「決められた木型を使わなければいけない制約があったり、基本的なパターンをいじることができなかったり。できてもステッチを一本足すとか、そんなことしかできませんでした」
"自分たちの思い描いたアメリカの靴"をつくりたいのに、それはアメリカではつくれない。歯がゆい現実に対し、工藤さん達は決断しました。
「自分たちの思ったものがつくれないんだったら、生産体制を変えて、リブランディングし、一からはじめよう」と。


息の長いブランドにしたいなって

「革靴をもっと好きになってもらいたい」WHEEL ROBE(ウィール ローブ)

かくしてWHEEL ROBEは日本の職人の方々とコンタクトを取り、生産体制を整え、見事にリブンランディングを果たしました。これを機に、取り扱いラインナップを一新。普遍的なデザイン・伝統的なディテールの革靴をメインとしました。
なぜ、このデザインに行き着いたのか。それは、工藤さん達がアメリカやその他諸外国の靴を見てきたことが理由でした。
「海外には50年、100年と続いているブランドが沢山あります。日本でもビジネスシーンの靴なら、20年30年と続いているブランドがありますが、カジュアルシーンに関して言うと、日本では長く続いているブランドって、あんまり思いつかないですよね」
「ビジネスとカジュアル、どちらでも使えることをイメージし、シンプルで飽きの来ないデザインを提案していくことによって、息の長いブランドにしたいと思ったんです」
"WHEEL ROBE"の"WHEEL"は車輪を意味していて、"軌跡"を表しています。皮の採取から仕上げに至るまで、製靴にはたくさんの工程があって、たくさんの人が関わるので、完成までに多くの"軌跡"が残ります。その軌跡ひとつひとつにこだわっています。そして、靴は履いていくことによって、その人にとっての欠かせないWARDROBEとなり、WHEEL ROBEと共に"軌跡"を作っていく、WHEEL ROBEはそんな思いから誕生しました。
素材にも製法にもこだわった上質な一足を、長く愛着を持って履くことは、革靴愛好者にとってたまらないことでしょう。
このこだわりが伝わり、着々とファンを増やしているWHEEL ROBE。わざわざ浅草に足を運び、ショールームを直接訪ねるエンドユーザーの方もいるそうですが、ショールームでは販売は行なっていないそうです。
「ショールームは基本的に、お店の方々向けの展示会や、バイヤーの方が来られた時に新商品の商談などをするための場所なんです。直接販売をしないのは、流行はお店から発信するものだと考えているからです」


革靴をもっと好きになってもらいたい

ブルゾンタイプ(襟付き)のレザージャケット

革靴のかかとにはWHEEL ROBEのロゴが押されています。
はて、このロゴの真ん中の矢印は......「皆矢印って言うし、僕らも最近は言っちゃうんですけど」と、工藤さんは笑います。どういうことでしょうか。
「まず、スカイツリーのお膝元という意味があります。スカイツリーって、三点立ち構造になっているんですよ」
そして工藤さんは親指、人差し指、中指を立ててみせる。
「そして、三点と言うと足もなんですよ。足の裏は、土踏まずをつくるアーチ部分の両端とかかとの三点で支えています。ロゴの矢印には、その二つの意味を込めています」
なんと。WHEEL ROBEファンなら、ぜひ知っておきたい豆知識です。
工藤さんはリブランディングした当時について、こう振り返ります。
「あの時の流行はスニーカーで、スニーカーばかりもてはやされているのが、すごく悔しかったんですよね。僕らは革靴が好きだったので、業界が盛り上がるくらいの革靴を作りたい思いがありました。その思いを浅草界隈の工場の方に話せた機会があって、今振り返ると、その思いを汲んで、制作の融通をきかせてくれたのかなって思います」
このインタビューの最中に、工藤さんは何度も工場や職人の方への感謝の気持ちを口にしています。浅草とその近隣には、ショールームと一緒に職人さんなど工藤さんの人脈も根付いているのです。
穏やかな口調の中に強い意志がきらりと見えた工藤さんに、尋ねたくなりました――スニーカーを履いている層を取り込みたいという気持ちはありますか?

「取り込みたいまではいかないです、スニーカーを履く人はスニーカーが好きですし。でも、革靴ももっと好きになってもらいたいとは思っています」


お話を伺った人

お話を伺った人
工藤類さん
1987年生まれ。東京の下町、向島・浅草で生まれ育ち、父親の影響で幼少の頃から洋服や靴に興味をもつ。2010年より(有)トライ・アップに入社。2011年より(有)トライ・アップにてWHEEL ROBEをスタートさせる。

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